2019年8月4日『第4回居場所サミット in 神戸』を開催しました。神戸市内を中心に82団体189名の皆さんにご参加いただきました。
第1部では神戸市内の居場所の展開事例を2名の方に紹介いただいた後、藤山浩さん(一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所所長)に基調講演をお願いしました。
第2部は9つのグループに分かれて持続可能な居場所のあり方についてディスカッションしました。第1部のまとめは以下の通りです(第2部のまとめは後日発行する報告書をご参照ください)。
認定NPO法人コミュニティ・サポートセンター神戸(CS神戸)
(公財)神戸いきいき勤労財団、生活協同組合コープこうべ、(公財)コープともしびボランティア振興財団、NPO法人しゃらく、認定NPO法人しみん基金・KOBE
ネスレ日本(株)、(一財)神戸すまいまちづくり公社、健康創造都市KOBE推進会議
神戸市、神戸市社会福祉協議会、神戸市医師会、(一社)神戸市薬剤師会、(一社)神戸市ケアマネージャー連絡会
居場所「すずカフェ」を始めて約3年になりますが、チラシで知った第1回の居場所サミットに参加したことがきっかけでした。実際に活動しておられる団体などのお話がとても参考になり背中を押してもらった感じです。
現在は5人で週1回開催し、20~30人が参加されています。1枚100円のチケット制で、飲みものとおかしを盛る程度ですが、皆さんおしゃべりして楽しんでもらっています。
10年前からゴミ出しのボランティア活動も続けていますが、カフェに来ている方の中からゴミ出し活動に参加される人が出てきています。ゴミ出しも100円チケット制でボランティアさんには80円を、カフェの活動費として20円をいただいていますが、お金は不要というボランティアさんにはカフェのチケットと交換しています。チケットを通じて地域がぐるぐるまわる感じになってきています。
今後は、頼む人と頼まれる人をもっとつなげていくことやカフェでランチをすることを考えています。
ウェルシア薬局では、4年前から「ウェルカフェ」を運営しています。店舗入り口すぐの一番良い場所に約6坪のスペースを設置して、地域や行政の方と連携した地域貢献活動場所として開放しています。全国1800ほどある店舗のうち約240店舗で設置しています。
東灘区魚崎北町店の事例では、CS神戸さんからボランティアさんを紹介していただき、第2木曜日の昼に「かしまし処」という会をしています。お茶を飲んで、おかしを出して話をすることから始めて、回を重ねるごとに工夫して手作り教室的なものなどに活動が広がってきています。手作業は介護予防にもつながり、笑うことも認知症予防によい効果があります。
まだまだ利用者が少ないですが、無料で貸し出しているので、是非、利用していただき、元気で長生きできるまちづくりにつながればと考えています。ホームページからも申し込めますし、店舗にも気軽に問い合わせてほしいと思っています。
東灘区魚崎北町店の事例では、CS神戸さんからボランティアさんを紹介していただき、第2木曜日の昼に「かしまし処」という会をしています。お茶を飲んで、おかしを出して話をすることから始めて、回を重ねるごとに工夫して手作り教室的なものなどに活動が広がってきています。手作業は介護予防にもつながり、笑うことも認知症予防によい効果があります。
まだまだ利用者が少ないですが、無料で貸し出しているので、是非、利用していただき、元気で長生きできるまちづくりにつながればと考えています。ホームページからも申し込めますし、店舗にも気軽に問い合わせてほしいと思っています。
居場所への期待「1%戦略で循環型地域経済をつくる」
(一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山浩氏)
私は、いなか(中山間地域)の専門家として島根県益田市に在住し活動しています。いなかは先に高齢化していますが、逆に多世代多機能なまちづくりが先に始まっています。この5年、10年で居場所カフェなど数多くの居場所ができてきており、これは今までにない傾向です。ところで、「居場所」の反対語は「居場所がないこと」ではありません、「かせぐ場所」だと思います。
今までの日本は経済成長一本やりの社会で、暮らすために「かせぐ」ことが転倒してしまい、「かせぐ」ための「暮らし」になってしまっています。当然居場所はなくなります。また、人生100年時代を迎え生産年齢である20-60才を終わった後の暮らしも問題になってきています。「幸せになるために暮らすこと」=「かせぐこと」ではありません。
まず、都会の話をします。どんどん建設されているタワーマンションがとても心配です。皆さんはタワーマンションのいったい何階まで階段であがりますか?このような場所で子どもが育つのでしょうか?20、30年後どうなるのでしょうか?これ以上東京に人口集中するとどうなるのでしょうか?
東京も地方と同じように2050年には高齢化します。実際、東京23区は介護認定率が高いのです。東京オリンピックをやってる場合ではありません。長い目で見て一番持続性がないのは東京です。これ以上の都市集中は無理なのです。
高度成長期以降は都市への人口集中が経済成長のモデル(規模の経済)でしたが、全面的な限界に直面しており、今からは都市と田舎のバランスをとる必要があります。都市も地方のマンションも使い捨てになっています。
特に東日本大震災以降、人の流れが変わってきています。人口減少社会で人口の取り合で希望がないと言われてますがそれは違います。中山間部に人口が戻るようになってきているのです。その地域の持つ自然の底力、文化 暮らしの在り方など地域社会を組み立てなおしているところには人口が戻りつつあるのです。
高知県大川村などの事例にみられるように「過疎地」で実質社会増をしている地域があるのです。私の研究では多くの過疎地で人口当たり1%の増加を図れば子供の人数を守れるのです。これは、東京のためにもやるべき施策です。
島根県益田市二条地区や島根県邑南町などでは、様々な定住戦略によって年1%の定住を増やす人口持続可能地域になっているのです。公民館を中心に活動をしたり、地区で会社をつくったり、地区同士がお互いに学びあうような仕組みを作るなどしています。
もはや、従来型の成長路線は続きません。
まず地域で消費されるものを分析してみると、大きく分けて「食費」、「エネルギー」そして「交通」の3つが挙げられます。食費支出のナンバーワンは外食で、そのほとんどはチェーン店、地域外資本です。エネルギーも同じことです。地域外のモノを買って、利益が地域外に流れて行ってしまっているのです。全部を取り戻す必要はなく、域外流出の1%を取り戻せば所得の1%を取り戻せるのです。
パンを例にとれば域外で製造されたパンを売るのではなく、原料や製造を地元ですることによって地元にさらなる所得が生まれます。地元のパン屋さんも人口1000人単位なら地域で存立することができるのです。地元に1%の経済を戻す。地元に水をやることが大切なのです。野菜なども地産地消率を高めればよいのです。
従来の縦割りの補助金・行政制度では分野ごとの「規模の経済」になっていますが、これを人材、資金、土地、施設を横断し「範囲の経済」(柔軟な連結決算の仕組み)にすることを合わせ技と呼んでいます。
顔が見える範囲でヤマタノオロチ(多世代多機能の合わせ技)を地域に育てるのです。大きすぎても小さすぎてもダメで、数千人、小学校区単位ぐらいが望ましいです。その中には、居場所もつくります。
邑南町出羽地区では合同会社をつくり、自治会機能だけでは難しい収益事業や空き家対策などに機動的に対応しています。1人で作るのではなくみんなで出資して会社をつくり、各種補助金なども有効に使います。
いろんな職種を組み合わせ、みんなで力を出し合うことが重要です。1人分の所得を1つの分野で創出するのではなく、0.2人分などコンマ以下の仕事を集約していきます。これは居場所の運営にも重要な考え方です。居場所も1人の人が頑張るのではなく、みんなでローテーションすることが大切です。これは田舎も都会も変わらないと思います。小さな拠点を様々な職種で合わせ技で残すと所得が地域内に留まります。
高知県梼原町四万十川地区では空き保育園を活用して組み合わせ事業を、島根県雲南市波多地区では交流センターを活用し、住民に交付金をまとめてわたして福祉、公民館、コミュニティを一括にまとめ、売店も併設し運営しました。
波多地区では地域内交通を無料にしました。車は自治体が用意して、運営は地域でします。当然完全赤字ですが、この単独事業だけの収支を見るのではなく、それによって地域の高齢者が元気になり、結果的には高額な福祉施設をつくるよりずっと安上がりなるという連結決算の考え方で地域を見なければなりません。
明石市では市がスペースを借りあげて、こども食堂など多彩な人が集う場所を地域で運営し、子育て世代流入が関西ではトップの自治体になっています。この考え方は都会も地方も同じです。
高知県土佐清水市では、モーニングの日という200人の集落に200人が集まるという居場所があります。まず、月一でもよいので無理なくやり、顔がわかる、人が顔を合わすのが重要です。是非、都会でもやってほしいです。
イギリスのパブも地域のつなぎ役を果たしています。イギリスのパブのようにカウンターを設置するなどひとりでもいきやすい空間、場をつくる工夫が重要です。日本の中山間部でも小さな本屋さんができていますが、そこはひとりでも行きやすい場なのです。
イタリアでは日本のような大店法がないため地域にお店が残っています。村には広場もあり、カフェが居場所になっています。家と職場の往復だけではだめで、普通に話せるサードプレイス(居場所)が重要なのです。
日本では増え続ける介護・医療費用の問題は極めて深刻な状況です。しかし、地域別に分析すれば、田舎の介護費用が少ないことがわかります。それは、田舎のお達者度が高いからです。
その違いは、1つは地域づくりで年をとってもやること、居場所、役割があるかどうか。もう一つは生涯現役型の小さな農林漁業でものを作っていることです。
益田市真砂地区では、高齢者の買物支援のために週に1回送迎バスを運行していますが買い物するだけでなく、自分の作った野菜を持っていってそこの産直コーナーで売ってわずかながらも所得を得ています。今の農林行政はすぐに規模の農業を議論しますが、このような小規模な方式が健康維持につながり、医療介護費用を節約しているというトータルな見方をしないといけないのです。
一方、都会では農業のように作るものがないのでなにか工夫が必要ですが、財政難であればなるほど、こういう方向にシフト、投資するべきであり、連結決算の長い目で見た場合、都会での居場所づくりにも単なるたすけ合い以上の重要な意味合いがあります。
資源を無制限に消費するようなシステムが限界に来ている地球環境問題を考えた場合、ソーラー、バイオマス、風力発電など循環型経済にシフトすることも重要になってきます。 これからはお金の利子でなく自然の利子で生きていかないといけない。ここまで述べてきたような方向転換に加え、地域でエネルギーも再生し、自給できるようにできるようにしていくべきです。
確かに都会に比べ地方での交通移動費用はかさみますが、EV(電気自動車)の技術とシェアリングエコノミーの手法で解決していく可能性があるのです。
地方再生の活動では、女性の活躍、女性の起業が多く見られます。ブックカフェやもりのようちえんなどの事例があります。
従来の大きく、強く、速くという男性型発想の直線型達成方法ではなく、美しい、美味しい、楽しいという暮らしに根ざした女性型の曲線的達成方法が重要です。
人と人をつなぐことが地域社会においては重要ですが、人をつなぐキーマンが大切になってきます。「サンゴ礁」人的ネットワークと呼んでますが、地域社会ではこのような人間関係を育てる仕組みが重要です。
人口とは人生の数です。経済成長一辺倒のものではなく、手間をかけたものしか人には伝わらず残らないので、この人は頑張ったという記憶と風景が地域や次の世代に残るようにしなければなりません。
これは都会でも田舎でも同じです。もう一回頑張ろうという社会になってきているので、居場所は単なる助け合いの場だけではなく、記憶と風景が残る場所になるように頑張ってほしいと思います。
2016年8月7日(日)
神戸市勤労会館大ホール
62団体222名
居場所実践者10名によるパネルトーク
居場所マッピングのワークショップ
「運営のコツ&べからず」アイデア出し
2017年8月27日(日)
神戸市勤労会館大ホール
79団体203名
基調講演 河田珪子さん
「人と人のつながりから広がる安心社会」
課題解決のためのワークショップ
「居場所に役立つみみよりプログラム」および協力団体によるブース展示を同時開催
2018年8月19日(日)
神戸市勤労会館大ホール
86団体217名
神戸市保健福祉局高齢福祉部介護保険
神戸市こども家庭局こども青少年課
NPO法人コミュニティかりば 佐野正明さん
NPO法人インクルひろば 松岡喜久子さん
はっぴーの家ろっけん 首藤義敬さん
区別ワークショップ「子どもから高齢者まで、新しい居場所利用者を増やすために、私たちが協働してできること」
「居場所に役立つみみよりプログラム」および協力団体によるブース展示を同時開催
2019年8月4日(日)
神戸市勤労会館大ホール
82団体189名
すずカフェ 鈴木好美さん
ウェルシア薬局㈱ 鶴田峰子さん
(一般社団法人 持続可能な地域社会総合研究所 所長 藤山浩さん)
居場所への期待「1%戦略で循環型地域経済をつくる」
「持続可能な居場所づくりのために、私たちができること・アイデア」